痴呆と物忘れの違い

認知症の基礎の説明
多くの人が痴呆の初期症状として認識している物忘れですが、実は老化による物忘れと痴呆の症状としての物忘れには、様々な違いがあります。痴呆の初期段階においては、この2つを見分けることは困難ですが、症状が進むことで徐々に違いが明確になってくると言われています。

 

老化現象としての物忘れと痴呆の初期症状である物忘れは、いずれも脳の神経細胞に変化が起こることで見られる症状です。しかしながら、神経細胞の変化のしかたに違いがあるため、症状や進行スピードにおいて多くの相違点が見られます。

 

人間の体は、加齢に伴って筋力など多くの機能が低下します。これと同様のことが脳でも起こっており、脳の神経細胞が失われて記憶力が低下することで加齢による物忘れが生じます。

 

一方、痴呆による物忘れは脳疾患の1つであるため、より速いスピードで神経細胞が失われていきます。これがどのように症状に現れるのかと言うと、まず加齢による物忘れは進行がゆるやかなのに対し、痴呆は進行性のものであると言えます。また物忘れをする人はそれを自覚していますが、痴呆の人は痴呆であることを自覚できないことが多いと言われています。

 

症状の違いとしては、物忘れの場合は人の名前など部分的な記憶の欠如であるのに対し、痴呆はそれに加えて家事の手順が分からなくなるなどの実行機能障害も伴います。

 

また痴呆の場合は日付や場所なども分からなくなることがありますが、物忘れではそういったことは起こりません。さらに痴呆では、紛失したものを泥棒に盗まれたと妄想したり、作り話をしたりなどの症状も現れるため、家族や身近な人を混乱させることも多々あるようです。